穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

※当ブログの記事には広告・プロモーションが含まれます

果てなく共に

 


君こひし寝てもさめてもくろ髪を
梳きても筆の柄を眺めても


逢見ねば黄泉よみぢと思ふ遠方へ
宝のきみをなどやりにけん


たゞ一目君見んことをいのちにて
日の行くことを急ぐなりけり


思へどもわが思へどもとこしへに
帰りこずやと心乱るゝ

 


 以上はすべて与謝野晶子が遠い異国──フランス、パリ──に遊学中のおっと鐵幹を慕いて詠みし歌である。

 

 

 


 明治末、西暦にして一九一二年ごろの作だろう。


 愛しい貴方と、常にくっついていなければ不安で堪らないのだと、歌の本意は、そんなあたりに在るらしい。結婚から既に早や十年以上を経ているにも拘らず、これはなんたる熱愛ぶりか。世間知らずな学生が初恋に悶える心境を三十一文字みそひともじに直したと、そう説明されたところで素直に信じてしまえそう。直木三十五は正しかった。「最近発表された与謝野晶子の歌を見ると、彼女が幾人子供を生んでも年を幾つ重ねても、人間的情熱に於いて永久の青春を湛へてゐるのを知る。サフォー以来女詩人も随分多いが彼女程情操に恵まれたものはすくない」。精神的にいついつまでも若いのだ。蓋し羨ましき限り、佳き資質ではあるまいか。

 

 

Akiko and Tekkan Yosano

Wikipediaより、晶子と鐵幹)

 


 与謝野夫婦の間には、最終的に十二人もの子が生まれたと聞き及ぶが、納得である。


 比翼連理の体現と、そう評したとて褒め過ぎではないはずだ。


 夫婦仲の睦まじいのは美しい。


 確か正宗白鳥だったか、「美」とは畢竟それ自体、歴然とした一個の力と言ったのは──。

 

 

フリーゲーム『芥花』より)

 


 酷暑の所為で脳味噌が本格的に駄目になりかけている今日、なるたけ美なるモノに触れ、活力の補充に努めるは、苛酷に過ぎるこの夏をどうにかこうにか正気で乗り切るひとつのよすがとなるだろう。

 

 

 

 

 


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
この記事がお気に召しましたなら、どうか応援クリックを。
 ↓ ↓ ↓

にほんブログ村 本ブログ 古本・古書へ