重度の不眠に憑かれた者は、だんだん妙な心理状態に移行する。
己が起きて、眼を覚ましていること自体に、言い知れぬ不安を持つのだそうな。
「漠然とした」と述べておくより他にない、それは一種、異様な心地。筆にも口にも表し難い、ペン先だろうと舌先だろうと捕捉しきれぬ不定形。経験者にあらざる限りはついに理解の及ばない、極めて特殊な感覚という。

この段階で手を打たず、下手に放置しようものなら、彼のココロはますます重度に病んでゆく。目覚めに対する居心地の悪さ、焦燥は、やがて自分が生きていること自体に対する不安へと、ぬるりと変質されてゆく。
安堵を求めて、──睡眠欲と綯い交ぜられた希死念慮が発生するのはこの時だ。ここまで至った人間は、恍惚として自死しかねない危うさを持つ。ギリシャ神話はよく出来ている。
以上はかつて、今から百年ほど前に、小酒井不木が唱えた説だ。
医学博士で大衆作家。専門知識をうまいこと、己が創作に活用もする。ちょっと手塚みたような背景有す彼である。
熱帯夜に苦しめられて、眠りの質が無惨に
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐると、頭の中で繰り返し反響しては渦を巻く。


(『まつろぱれっと』より)
夏の暑さに
小氷期の余韻も去らぬ大正・昭和の昔時に於いて既に然り。況や温暖化の叫ばれる、現代社会に於いてをや。
狂気を
こんな場所にも庶民の負担の増加が見えて、心底げんなりさせられる。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
この記事がお気に召しましたなら、どうか応援クリックを。
↓ ↓ ↓
![]()

