怪文書が出廻った。
標的は、日本全土の富豪たち。
「今なら二百円ポッキリで貴方に未来の情報をこっそりお伝え致します」と、──つまり予言の押し売りを試みた馬鹿があったのだ。
以下が即ち、問題の文書、その中身。
「十二月十一日までに金二百円以上送金せば人生の大福音たるべき神示に基く大予言録を送附す、右は将来発生する軍事、経済、政治、天変地異に関する予報をなすべし…(中略)…書面を受けた者は至高の幸運者なれば必ず期日までに送金せよ」
実に大正十三年十一月の沙汰だった。

(viprpg『ジャマイカじゃまいか』より)
帝都が瓦礫の山と化し、十万人が死亡した大震災の惨禍から、やっと一年を経たばかり。
人心は未だ安定を欠き、心の底には焦燥が澱の如くに蟠っている時期だ。
そうした弱みにつけ込むような卑劣な手口であるとして、当局は激怒、血眼しての捜査が行われた結果。──無事年内に容疑者確保と相成った。
不届き者の正体は、京の都は大本教のお膝元たる綾部の街に居住する、熊谷某なる男。土地の影響によるものか、己を第二の出口王仁三郎なりと信奉している誇大妄想的青年で、例の「予言」も
こんなのの相手をさせられる刑事こそいい面の皮である。
筆者個人の身としては、予言、予言書、未来からの謦咳等々、およそその種の代物に、さしたる興味を抱けない。
が、予言によって掻き乱される人心や、揺れ動く社会相に対しては、常に深甚なる興味を有す。
ここ数週間内外も、「7月5日」関連でこの悪趣味をとっくりと心ゆくまで堪能させていただいた。
それがどうやら、私という人間らしい。
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