平民宰相・原敬が暗殺者の兇刃を胸にぶち込まれたところ。

東京駅の一隅の、まさにその場所、その座標の床面に菱形の化粧レンガを嵌め込んで目印としておいたのは、吉田
二代目東京駅長を務めたこの人物は、原と同じく、岩手県の出身だった。
つまりは同郷。それだけにまた故人に対する思い入れも
──駅頭に記念碑を建てろ。
とか、
──銅像を置いておくべきだ。
とか、顔じゅうを口にする剣幕で騒ぎまくっていたくせに、結局一個半個の案とても実現の運びに至らせず、御大将の遭難をいたずらに風化させてゆく政友会の無能忘恩だらしなさに内心大いに腹を立てていたらしく。駅長に就任したのを幸い、当時の記録や生き証人を片っ端から調べ上げ、正確な遭難場所を割り出し、あのささやかなマーカーの設置にまで漕ぎ着けたという
誰もやらないのであれば、よかろう、俺がやってやるの意気である。
これも一種の独断専行。駅長としての権力の、げにあらまほしき使い方といっていい。

以下は昭和二年度の、吉田十一の直話から。
「僕は僕だけの考へでしるしをして置いた、いづれ後になって真の場所が分からなくなるからである、昨秋ハルビンに行った時伊藤公の暗殺された真の場所が知らしてくれた人によっていつも違ふので、原氏の遭難場所もまた同じ様にわからなくなるのを恐れたからである。昔はなかった電車出札口が十四年に出来たので真の場所は出札口の建物の本当のきはになってしまった、それでも建物の下にならないでよかったと思ふ、同郷の先輩をしのぶあまり正確に伝へたかったからである」
郷党意識の
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