ベルギーは
山なき国や
チューリップ
高浜虚子の歌である。
彼の地を訪ねた際、詠んだ。
昭和十一年二月二十日時点を以って「世界行脚に出た」と云うから、二・二六事件勃発のスレスレだったことになる。クーデターの報道を、おそらく船中で耳にして、さぞ驚いたことだろう。間一髪で日本を離れ、仏独白英各地を巡歴、六月十一日、帰国。四ヶ月弱の日程を無事完了したそうだった。
まあ、それはいい。
冒頭掲げた五・七・五。
これが余人の、歌道に何の実績もない無名の作であったなら、世間の評価は果たしてどうであったろう。「小学生並みのセンス」と一蹴されて洟もひっかけられずに終わるが関の山ではなかろうか。
実際問題、
高浜虚子の句であればこそ光輝を放つ。天真爛漫、千波万波の苦悩を抜けた先の陽気さ、悟性の発露と受け止められて、ヤンヤヤンヤの喝采を浴びせかけられもするのであろう。
まこと浮世は茶番狂言の如きもの。馬鹿馬鹿しくも愉快なり。腹を抱えて、せいぜい哄笑するが良し。
他に虚子はフランスで、
フランスの
女美し
木の葉もと
またドイツにて、
南岸の
李花にラインの
渡舟
こういう素朴な味わいの句を、それぞれ詠んだものだった。
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