穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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郷愁触媒、過去への巡礼


 片付けられない餓鬼だった。


「一枚のCDを聞き終わったらキチッとケースにしまってから次のCDを聞く」タイプではなかったのである、少年の日のこのおれは――。


 だからいま臍を噛んでいる。


 正月、実家に帰省した際、抽斗という抽斗をいちいちひっくり返す勢いで、かつて遊んだゲームを探した。

 

 

 


 どうも世間の一角にレトロゲーム珍重のがあるらしい。氾濫する3DCGに食傷しきった精神がドット絵の素朴を求めだしたか? ポリコレだのフェミニズムだの、外野の声のやかましくない、定型テンプレ以前の独創的な展開ないし世界観に惹かれたか? まあいい、理由の詮索は別にいい。とまれこいつは、ちょっとした小遣い稼ぎになりそうだ。

 

 そういう期待――下心と換言しても構わない――に背を押されての「家探し」だった。


 ゲームが出てきた。

 

 

 


 しかし多分に、ソフトだけが、だ。

 

 

 


 外箱にせよ説明書にせよ、附属品は悉皆まるっと散逸していて影もない。


 これでは売れない。


 売っぱらっても買取価格はダダ下がり、二束三文が関の山、透かし見るように明らかである。


 それならまだ手元に置いて、ノスタルジックの材料にでもしていた方が有益だ。セピア色の世界の中でせわしなくボタンを操作する、あの頃の俺に怒鳴りつけたい、「整理整頓はちゃんとしろ」。ああ、これが慙愧の念というヤツか。

 

 

 


 探索ついで、このようなモノに触れもした。


『STAMP ALBUM』――切手のコレクションである。

 

 

 


 収められている品は、1960年代が主流のようだ。

 

 

 


 64年東海道新幹線開通記念を皮切りに、

 

 

 


 姫路城修理完成記念、

 

 

 

 

 第21回国民体育大会記念、

 

 

 


 明治百年記念、

 

 

 


 小笠原諸島復帰記念、

 

 

 


 原子力船進水記念、

 

 

 


 東名高速完成記念、

 

 

 


 他にも他にも――時代の動きの激しさを実感させる断面図に満ちている。


 訊いてみると、どうやら父の情熱の名残りだそうな。


 蒐集癖も或いは遺伝するのだろうか。自分のルーツを確認するのは、なんにせよ悪い心地ではない。

 

 

 

 

 


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