北海道へ行くと、停車場でも旅館でも、あらゆる施設が隙あらば牛乳を飲ませようとする――。
毎日新聞に籍を置く、とある記者の弁である。
昭和三年、取材旅行を総括して、だ。
(旭川近郊、平手牧場)
試される大地に酪農王国を築き上げんと、たゆまぬ努力、営為があった。
地元民のそういう熱気に押されてか、道庁もなかなか味なことをやっている。その消費量を伸ばすため、換言すれば日本人にもっと牛肉を味わわせ、乳を鯨飲させるため、なんと『日本書紀』の権威を借りて宣伝の用に充てたのだ。
なんでも神武天皇の巻中に、こういう
またその後に「牛は稼職の
かつての美風、日本人本来の姿を取り戻すには、鎌倉以来、永きに及んだ武士の支配を打ち破り、一君万民の王政復古が成し遂げられた
(真駒内牧舎)
半ば朽ちかけた書物を紐解き、ヤケシミまみれの紙面から、こういう蒼古たる文章を取り出してきて最新式の宣伝術に落とし込む。その一連の作業には、如何にも戦前・昭和
そういえばウィンタースポーツを盛り上げるにあたっても、秩父宮の行啓を、道庁は奇貨とし大いに活用したものだ。
皇族と試される大地との関係は、存外深く幅広い。
(北海道庁)
ときに私の手元には、『農業事物起原集成』の大著がある。
昭和十年、大野史朗著。
昭和五十三年に青史社から、
平成十六年にクレス出版から、
それぞれ復刊されている点、内容については折り紙つきといっていい。
むろん、牛についても触れている。せっかくなので、一部を以下に引用しよう。
我国畜牛の起源に就いては諸説区々であり、何等確説なく只
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