山梨は田舎だ。
変化に乏しい。
時間は駘蕩としてゆるゆる流れる。
が、停滞までには至らない。あくまで「乏しい」のであって、絶無といっては言い過ぎになる。
差異を求めてそこらを歩き、直面しては切なさに心慄わせるのも、私にとっては帰省の際の趣味の一つだ。
今回はこんなものを見付けた。
石垣の隙間から垂れ下がり伸びる房状の「何か」。
一瞬、キノコかと思ったがそうではない。棘がある。丸薬めいた黒粒が、一定間隔で表面に配置されている。
(おいおい、まさか、嘘だろう。――)
のけぞるほどに驚いた。これはサボテンではないか。
(Wikipediaより、ウチワサボテン)
瘡蓋みたく赤茶けているのは、山梨の気候に適わない所為か? どうも衰弱を思わせる色合いだろう。
しかし植物には諦めるという機能がない。
妥協を知らず、調和を思わず。ただ自己の種を、遺伝子を存続させるため、なりふり構わず足掻いてのける。本当に最後の一瞬間まで抵抗を止めない。だからこういうことになる。
ああ、まったくなんという力強さか。
この石垣に溢れているのは、まるで生命そのものだ。
複雑煩瑣な人間社会に疲れた心に、この単純さはありがたい。
よく洗浄された精神で、新年を迎えることが出来そうである。やはり偶には、故郷に
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