『
『朧村正』を夢中になってプレイした過去を持つ私にとって、決して見逃せぬタイトルである。和を基調とした世界観といい、横スクロールアクション的な戦闘といい、かの名作を彷彿とさせる要素がてんこ盛りであったのだ。
良き米を作ることが主人公の強化に繋がるという、あまりに独特な成長システムにも惹きつけられるところ大だった。そう、きっと日本人にはこの穀物を、一種神聖な存在として崇めたがる向きがある。今は遥かな上古の昔、稲作を以って王化の証となさしめた大和朝廷にその淵源を見出せるであろうこの偏りは、むろん私の中にもあって、そこを大いに刺激された格好である。
ところがここに問題が一つ。
白状すると、私はあまり米作りに詳しくない。
素人そのものといっていい。山梨県人は半世紀前、水田の大部分を埋め立てて、以ってミヤイリガイの棲息地を物理的に消滅せしめ、風土病を克服した民族だ。
埋め立て地は、その多くが果樹園となった。
私の生家の周囲にも、広がっているのは桃畑か葡萄園かのどちらかであり、要するに「黄金の海」には馴染みが薄い。
『天穂のサクナヒメ』は農林水産省のQ&Aが有力な攻略サイトとして活用されてしまうほど、その方面にこだわり抜いた作品だ。果たして私に見事な米が作れるだろうか。
しかし心配は無用である。本棚に頼れる味方を発見したのだ。そう、明治四十四年に青木信一農学博士監修のもと出版された、『通俗農業講話』という一冊を。
何年か前の――今年は中止になってしまった――神田古本まつりで購入した本書をめくれば、案に違わず、米作りに関する知識がたっぷりと。苗代の作り方から田植え・草取り・害虫予防に至るまで、克明に記載しておよそ至らざるところがない。
(螟虫の図説。稲の髄を食い荒らすからズイムシとも)
明治時代の本であるゆえ、サクナヒメの世界観とも雰囲気的に近いであろう。百万の味方を得るとはこんな気分だ。不安は完全に払拭された。いざ尋常にプレイせん。
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