穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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夢路紀行抄 ―きれいにならぬ―


 夢を見た。


 不毛極まる夢である。


 夢の中、私は慣れ親しんだ自宅のシンクに突っ立って、ひたすら洗い物に勤しんでいた。

 

 

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 山積する汚れた食器を、無用な水道代が嵩まぬように効率を心がけつつ雪いでゆく。

 

 ところがこれはどうしたことか、泡を落として水切りかごに置いたはずの品々が、ふと目を戻すと再びきたならしく喰い残しをこびりつかせてそこにある。


 はて、確かに洗ったはずだが――いくら首を傾げてみても、目の前の光景は変わらない。


 やむを得ず、再びシンクに叩き込み、スポンジでごしごしと磨きをかける。今度こそ大人しく綺麗になっていやがれと、念と力を籠めながら。


 そんな私を嘲笑いでもするかのように、同様の現象が繰り返される。


 いつまで経っても洗い物の総量が減じない。


 嬲られているようなものであった。


 ハムスターじゃあるまいし、延々と同じ動作の繰り返しを強いられて苦痛でないわけがない。その苦しみが、本来麻痺させられているはずの心の機能を呼び起こしもしてくれた。


 すなわち、違和感を覚えるという重要な機能を。


(いくらなんでも、これはおかしい)


 現実にこんな不思議が起きてたまるか、ひょっとすると私は目下、夢でも見せられているんじゃないか――正解にたどり着くのとほとんど同時に、私は寝床で目を開けた。

 

 

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 夢の中で「これは夢だ」と自覚する。


 なにも今回が初めてではない。伝え聞くところによればこれこそ明晰夢を見る第一歩という話だが、第二歩目を踏み出せた経験はついぞない。自覚するや否や途端に夢が晴れてしまって、思うさまコントロールする暇もないのだ。


 今回も失敗したかと起こした体に、違和感が。


 なにやら妙に頭が重い。


 頭蓋の中身がそっくりそのまま、鉛にでも置き換えられてしまったようだ。


 偏頭痛との付き合いは長いが、時期が時期であるだけに、流石にちょっとぎょっとする。取り急ぎ体温計を脇に挟むと、十数秒で36.2℃を示した。


 まず、これならば、大事はなかろう。それでも用心のためにバファリン二錠をぶち込んで、私は本日、四月三日を開始した。

 

 

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