豊穣を齎してくれた感謝を籠めて、その年に採れた穀物を、伊勢の皇大神宮に供え奉る宮中行事だ。この祭事に合わせて伊勢神宮では御装束・祭器具を一新するから、「神宮の正月」とも通称される。
この上なく重要な儀式なのだ。
戦前までは、神嘗祭が行われる10月17日は祝日に指定されていた。
その神嘗祭をテーマとした唱歌を、昭和四年発行、『小学趣味読本』の中に見付けたので紹介したい。
今年の秋の
祝ふあしたの朝日かげ
なびく御旗も輝きて
にぎはふ御代こそ目出度けれ
五十鈴の宮とは、むろん五十鈴川のほとりに在る伊勢神宮のこと。
懸税とは、天照大神に捧げまつる穀物を指す。昔は税を米で収めていたというのもあるだろうし、また一説には、神前に穀物を捧げるのに、稲の場合は穂のついたまま垣に掛けて差し出すのがならわしだったというから、いつしかカケが懸になり、このような言葉が生まれたのではないかと言われてもいる。
それにしても、だ。今年のこの残暑の厳しさときたらどうであろう。
秋の祭事まで二週間を切っているのに、一向夏日が去らぬではないか。
明治初頭、太陰暦から太陽暦に
旧暦9月17日に執り行われていた儀式を、そのまま新暦9月17日に受け継ごうとしたところ、稲穂の生育が不十分な状態で、様々な故障が出来したのだ。それで現在の10月17日に改められた。
しかしながら、こうまで気候変動が激しいと、十年か二十年後にはまたぞろ神嘗祭の日程を動かさねばならない時が来るやも知れぬ。
なんともはや、気ぶせりなことだ。
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