穢銀杏狐月

穢銀杏狐月

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

夢路紀行抄 ―泥の浴槽―

 

 夢を見た。
 温泉のデモンストレーションを見物している夢である。


 浴槽には最初、突っ込んだ指先がすぐ見えなくなるほどに濃い、きたならしい黄土色の泥水が満たされていた。そこへその温泉の湯を注ぐと、なんたることか、みるみるうちに濁りが晴れて美しい澄んだ湯舟が出現したのだ。


 これこそ当温泉の効能書きの証明であり、この効果を湯に付随せしめるのに三十年かかった、苦心惨憺の賜物です、とねじり鉢巻きの初老の男性が誇らしげに語っていたが、今考えるとあまりにも異常な情景である。


 もっとも夢中の沙汰のこと、例によって例の如く当時の私は些かの疑念も抱かずに、すごい、なんて素晴らしい温泉だと心の底から感動し、大喜びで身体を湯舟に投げ込んだ。

 

 

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 湯から上がると、何故か脱衣所にバーベルが設置されているのを発見し、これまた嬉々として上げ下げして愉しんだ。


 廊下にはアラブの王族めいた衣装を着込んだ、しかし顔付きはどう見ても日本人な青年が歩いていて、向こうに婿入りでもしたのだろうかと勘繰ったあたりで目が覚めた。


 一昨日からこっち、腰痛の所為で筋トレに励めぬ状況が続いている。


 そうして積もった欲求不満が、或いはこんな夢を見せたのか。我ながらわかりやすい脳の仕組みであることだ。

 

 

 

 

 


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