穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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いろは歌和讃 ―声に出して読みたい日本語―

 

 神保町にて、面白いものを手に入れた。
 経典である。
 肉厚の和紙を繋ぎ合わせて屏風の如く折り畳み、墨痕淋漓と記されたのは仏道に関するあれやこれや。紛れもなく経典であろう。


 ただ、この経典が一風変わっていることは、まず装丁が皆無な点が挙げられる。

 

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 一切の飾り気が見られぬばかりか、中をのぞくとところどころに修正液のあとがあり、どうにもお粗末な感がぬぐえない。

 

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 あるいは身延大学のような、仏教系の学校に通う何某かが、課題の一環として作製したものではなかろうか。こんな代物まで商品として取り扱われているあたり、神保町は奥が深い。いったいどんな経路をたどって流れ着いたものであるやら。因みにお値段500円也。


 さりとてどのような背景があるにせよ、記されている内容の価値が損なわれることはない。

 

 相互供養
 追弔
 互恵に融和
 いろは歌
 祈祷


 の五つが収録されているが、どれもあまり見慣れぬもので、それだけに新奇な興味で以ってこれを味読することが出来た。


 特に「いろは歌」が面白い。名の通り、「いろは」47字を称賛する歌なのだが、一貫して七五調から成っており、韻を踏むこと玄妙なため、思わず声に出して読みたくなる。


 ご丁寧にも節回しに至るまできちんと明記されている。以下に全容を公開するので、皆様方にも是非とも口ずさんでみて欲しい。きっと功徳が舞い降りるだろう。

 

 

 

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 人類の幸福と文化開発に、身命を惜しまず尽力つくされし、弘法大師を偲ぶいろは歌


 文化に尽力つくせし 空海
 いさおは今に 隠れ無し
 わが日の本の 人民ひとぐさ
 文化の花を 咲かせんと
 金口こんく真説しんぜつ  大法だいほう
 青龍しょうりゅう阿闍梨あじゃりの 教誡みさとし

 

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 松の御稜威みいつに 流布せんと
 国字に作る 短歌みじかうた
 色は匂へど 散りぬるを
 我が世誰ぞ 常ならむ
 有為の奥山 今日越えて
 浅き夢見じ 酔いもせず
 如何なる無智の 稚児おさなご
 習うに易き 筆の跡

 

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 されども総字の 文字なれば
 知れば知るほど 意味深し
 僅かに四十しじゅう 七字しちじにて
 萬事に通ずる 便利有り
 よや世界の 果て迄も
 御恩をけざる 人も無し
 殊に弘誓ぐせいの 御慈悲は
 数多聖恩 結実むすばれ

 

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 あやなす遺跡は 限り無く
 不思議は世々に 新たなり
 南無大師なむだいし 遍照尊へんじょうそん
 南無大師 遍照尊
 真心こころ有る者 恩を知る
 南無大師 遍照尊


 現世当生大師の御霊光みひかりにて冥利みょうじゅし玉え

 

 

いろは歌 大和言葉の奇蹟―囲碁いろは百吟

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