妻「あなたは私があなたの生活の光明であるとおっしゃったじゃありませんか」
夫「うん、けれどもその時はその光明を出させるのにどの位費用が要るといふ処に気が付かなかった」
妻「お前さんの様な理屈の
夫「違ひ無しだ。何しろ広い世間にお前を貰ったくらゐの人物だからな」
甲「私は男振りの
乙「併しそれは
甲「何故です」
乙「そんな人は世界に一人しか在りませんのに、その一人は私の
「私は気懸りでならぬ。雨が降出したのに、妻は傘を持たずに出て行った」
「きっと何処かの店へ寄って雨を避けてお出ででせう」
「さやう、それだから私が心配して居るのだ」
良人「あの、おまへに話す面白い話がある。今までまだ話したことは無かったと思ふのだが」
細君「
良人「真実とも、それはおまへ」
細君(物憂げに)「そんなら是迄お
天下泰平の時、ある所で宴会があって、そのあとで舞踏が始まった。
一人の貴婦人が或軍人の手を執り、
「一緒に踊りませう」
と云ふと、軍人不承面をして、
「拙者は戦をする為に出来てゐる者で、踊りなどする人間では御座らん」
貴婦人にっこり笑って、
「
男「私は御承知の通り少々読心術を心得て居りますから、只今貴女が御心中にどういふ事を考えて
女「それでは何故
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