穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

※当ブログの記事には広告・プロモーションが含まれます

諧謔世界笑話私的撰集 ―男と女・夫婦関係―

 

昔と今


 妻「あなたは私があなたの生活の光明であるとおっしゃったじゃありませんか」
 夫「うん、けれどもその時はその光明を出させるのにどの位費用が要るといふ処に気が付かなかった」

 

 

 

没理家わからずやなればこそ


 妻「お前さんの様な理屈の分曉わからない人は是まで見た事がない」
 夫「違ひ無しだ。何しろ広い世間にお前を貰ったくらゐの人物だからな」

 

 

 

世界に一人


 甲「私は男振りのい胆のしっかりした、そして気高い所のある人を良人おっとに持たうと思ひます。その人は不良わる習慣くせなどは無くて、心から私を愛する人でありたいのです」
 乙「併しそれは困難むずかしいでせう。ええ、如何しても困難しいのよ」
 甲「何故です」
 乙「そんな人は世界に一人しか在りませんのに、その一人は私のく先なのですから」

 

 

 

第一の気懸きがか


「私は気懸りでならぬ。雨が降出したのに、妻は傘を持たずに出て行った」
「きっと何処かの店へ寄って雨を避けてお出ででせう」
「さやう、それだから私が心配して居るのだ」

 

 

 

悪い話ばかり


 良人「あの、おまへに話す面白い話がある。今までまだ話したことは無かったと思ふのだが」
 細君「真実ほんたういお話ですか」
 良人「真実とも、それはおまへ」
 細君(物憂げに)「そんなら是迄おはなしになったことは無かった」

 

 

 

背負抛せおいなげ


 天下泰平の時、ある所で宴会があって、そのあとで舞踏が始まった。
 一人の貴婦人が或軍人の手を執り、
「一緒に踊りませう」
 と云ふと、軍人不承面をして、
「拙者は戦をする為に出来てゐる者で、踊りなどする人間では御座らん」
 貴婦人にっこり笑って、
貴公あなたを使ふ所があるまで、油を塗って兵器庫に吊して置きませうか」

 

 

 

読心術


 男「私は御承知の通り少々読心術を心得て居りますから、只今貴女が御心中にどういふ事を考えて御出おいでになるかと云ふことが分かって居ります」
 女「それでは何故彼方あっちへ往っておしまひになりません」

 

 

 

f:id:Sanguine-vigore:20190303203844j:plain

 

 

 


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
この記事がお気に召しましたなら、どうか応援クリックを。
 ↓ ↓ ↓

にほんブログ村 本ブログ 古本・古書へ