穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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序文 ―信じるという行為には、多少の愚かさが不可欠である―

 

  些事が重なって完璧を作る。しかし、完璧は決して些事ではない。

 

 何のことはない、「塵も積もれば山となる」とほとんど同じ内容だ。同一の事柄を表現を変えて言ったに過ぎない。
 しかし私のような単純な頭脳の持ち主にとって、ミケランジェロの名は強烈な電磁性を帯びている。使い古され、すっかり聞き飽きたような諺でも、ひとたび彼の口を通して放たれるやあら不思議、なるほど至極ごもっとも、ようし我もと血を熱くして走り出さずにはいられない――そんな瑞々しき感化力を取り戻す。
 世の中のことは、万事がこうだ。如何なる言葉も、発言者次第で説得力は乱高下を繰り返す。
 が、だからといってそれを儚んだり、冷笑主義にかぶれたりしてもつまらない。否、つまらぬどころか人生にとってあからさまに有害である。
 そうだ、所詮単純な脳味噌なのだ、変に格好つけたりせずに、最初に受けた感激のまま、素直に随喜渇仰していればよいのだ。おお、流石は万能の天才ミケランジェロよ、なんと含蓄に富んだ言葉であろうか。ようし、ここは一番、この私も彼に倣って日々些細なる短文を積み重ねねばなるまい。


 ――いつの日か、この試みが些事でなくなることを信じて。

 

 

 

 


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