穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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2021-06-04から1日間の記事一覧

文豪ふたり ―静寂を貴ぶ男たち―

カーライルは神経過敏な男であった。 とりわけ「音」への感覚は一種特別なものがあり、その繊細さは時として、殻を剥かれたエビにすら擬えられたほどである。時計のチクタク音にキレ、遠くの犬の鳴き声に集中力を掻き乱されて、逆上のあまり二重壁の部屋をつ…